Hunnigan, Sloane and Minchin

グランドミュージカルとか映画とか

2023年ウィーン&ブダペストの旅。3 「Rebecca」観劇

昼の観光から帰っていよいよ初めての海外観劇となりました。
着席までのあれこれ(ちょっとやらかし)と舞台の感想です。

いざライムント劇場Raimund theater

昼の観光を終えてウィーン西駅Westbahnhofのモールをちょっと覗き、裏通り側の出口に警察が来てるのとかを横目に見ながら*1ホテルに帰着。

案外時間が無くなったけど、一応劇場行くのにちょっと気を遣いたいなと荷物に入れていたワンピースに着替え、寒いので一応昼も来ていたダウンを装備し出発。即到着。

開場前の広場にテントが出て既にお飲み物を楽しまれてました。やっぱりお楽しみは外なんだ〜っていうのと思った以上に社交の場感がすごい…。(もしかしたらこの週はイースター期間にJCSで中断されていたRebeccaのカムバック2日目の公演だったからかもしれません。こればっかりはそうでないの日に行かないとわからない…)

開演前のライムント劇場外観

上着と…お荷物は…?

ここからちょっとしたやらかしの話です。
ウィーン観劇経験のある方なら勝手知ったるお話かと思います。

建物に入るとスタッフさんが英語で「正面がエントラス、下がクロークです」との案内がありました。ちょっと混乱したのでエントランスを再確認し、クローク…?と気にかかりつつとりあえず売店も下階に降りパンフレットとCDを先に購入。ものすごい混雑のクロークを横目にチケットを見せてエントランスを抜けようとすると、
「私共のポリシーですので、上着とバッグはクロークへお預け下さい」と一言頂く。
そっかポリシーかぁ。
なら仕方ない、とクロークに行くも上着を小脇に抱えてる人も歩いてるしバッグにダウン入るしなぁ…と悩み倒して一応聞いてみる。
私「バッグは預ける必要がありますか?」
スタッフさん「お客様のバッグは大きすぎるため客席へは入れません」(ざっくり)
…ああ!!
実はこの時私が持っていたのは昼も観光に使ったバックパック。荷造りの際荷物にハンドバッグを入るか迷って忘れてきた次第。そこまでビッグサイズでは無いけどハンドバッグよりはずっとでかい…あと重い。そういうこと!
帰国して知りましたがこの規定はウィーンでは劇場法で決まっている消防対策なのだそうです。それは厳しくなる…。

日本の劇場でクロークに行くことがまずないので正直面倒くさくて…。(すいません)
それにバックパックを手放したら手ぶらになってしまうのが気がかりでしたが、ポーチ状のオペラグラスと長いベルトがついた旅行用財布を肩にかけてそれらしく済ませました。これが本日の精一杯。

そもそも折角服装を良くしてもバッグがこれでは台無し…というのを学んだ気がします。周りを見渡せばドレスコードは厳密になくてもドレスやスーツじゃなくても、襟付きシャツやきれいなパンツなどでコーディネートを「出来るだけ整える」ところとか勉強になりました。
帰っても着飾ったのに小さいバッグのサブに雑なトートバッグとかやめよ…。

 

Rebecca開演

鑑賞そのもの違い

客席に入ると劇場全体の小ささに驚き、着席して奮発した席の見やすさに安心してしばし待ったところで開演。
正直いつものような感想は書けないです。Rebecca自体はNetflix版で予習はしてきたので言語はそこまで問題なかったのですが、ここで受け取ったのは物語以上に劇場の熱気。パフォーマンスがその次といった感覚でした。

Rebecca開演前

幕が開いて歓声。主人公”私”Ich"が歌い終えたところでものすごい歓声。
お芝居になると声は無いけどぐっと集中してる感覚が劇場全体から伝わる。
ビッグナンバーには惜しみない歓声にショーストップ。笑えるやりとりではハッハッハッハッと声を出して楽しむ。

日本の劇場での各々が集中しきり、自分の内側で咀嚼しつつ他の人と笑いのタイミングの解釈違いさえ気になるようなせせこましさが全然無い。*2自分も気持ちが開放される感覚さえあるんですね。

私は日本で観劇中のおしゃべりが苦手ゆえ「海外の劇場はうるさいよ」と聞くしどんなもんか覚悟してやる…!ってくらいの気持ちだったんですが、ちょっとそういうのとは違う。ちらほら同行者に話しかける声も聞こえますが、全然ストレスにならないんですよ。舞台を全力で楽しんでる、という反応の一つに聞こえるから。(※言葉が分からないのが理由の可能性もありますが)
この熱気に押されての3時間、完全に新しい体験でした。

上手からスター下手からスター

当日のキャストはこちら。

Rebeccaキャスト表

これを事前に見るのを忘れて、もしマキシムがMark Seibertじゃなくて驚かないぞ!という気持ちで挑みましたが無事にマークのマキシムが拝見できました。
でっっか。
体も存在感も歌声も全部でっっっっっか。
そう、私はこれを見に来たんだ…この”巨大で尊大”なタイプの俳優を。そして散々音源で聞いた華やかな歌声。影がある男にしてはちょっと”陽”の気が強くてICHを怒鳴りつけるところで急に元気になっちゃっててそういえばMozart!の猊下だった男でした。序盤でなんか客席いじり的なアドリブかまして変な流れになったっぽくておかしな空気になってたのも、言葉は分からないながら楽しかったです。

ダンヴァース夫人のWillemijn Verkaikさんは昨年来日していましたね。オーブコン行った方の感想を聞いて楽しみにしてたけどほんと…すごい…。圧倒的な声で4回歌われる表題曲Rebeccaの威力が高すぎて何回ショーストップしたっけ??(2幕冒頭でバルコニーに逃げるICHを追いかけて二人で外を見たまま拍手を受け続けてちょっと変な感じになってた) Rebecca後も追いたい方になりました。

そして驚いたのがベアトリス役のAnnemieke van Damとジャック・ファヴェル役のBoris Pfeifer。すみません、出演されてるって知らなかったんです…!
アンネミーケはドイツ版エリザベートを散々聞いていて最近もウィーン版メリー・ポピンズのCDを買ったばかり。(ダンヴァースのAlternateとは聞いてました) ボリスさんは私のドイツ語圏が気になるきっかけになったロミオ&ジュリエットRomeo und Juliaの大公としてオープニングのアホほど聞いてるVeronaを歌っていた方。見た目でアレ?と思ったところで二人とも声でわかる…!

私はウィーンミュージカルはつい4年前に知ったばかりで(色々来日していた時代の人間ではないんです)、パンデミック中ずっと調べて聞いていた方が勢揃いしている公演だってことを知らなくて本当に申し訳ない…次々に現れるので興奮しきりでした。
(映像化、音源化キャストがそれだけ揃ってるってことなんですけどね)

さて存じ上げなかったキャストでもフランク役のJames Parkさんが誠実で屋敷の中で唯一頼れる存在として印象的でした。ほんとに誰も信じられないからね…。

レベッカとして

そんなこんなで存分に楽しみましたが、演出としては思ったより普通…かなとも思いました。お屋敷の具体的なセットが出てきて、予習した映画と同じ流れで見られるので安心感はあるのですが。ICHとマキシムの変化とかダンヴァースのレベッカへの強い思い入れとか、やはり日本版見てから挑んだらもうちょっと取りこぼしなく楽しめたかな、と惜しい気持ち。
ただやはりラスト、高い天井を利用した屋敷(主に階段)が燃えていくのはここで楽しむもの!という感じで迫力があっていいですね。歌声と炎と客席の興奮で熱い観劇体験が出来ました。

劇場という場所について

観劇を終えカーテンコールはさっぱり一回。みんな即スタンディングオベーションし、さっぱり客出し演奏中にホールを後にしました。
というのも私の座った列に歩行補助のいるお客様がいて、スタッフさんがカテコ中に待機していたから。このお客様は開演前直前、大体みんな着席した後にスタッフのアテンドで入って来られて同列のみんな列を一度出ました。このスタッフさんが必要をみんなに認識させることによって、「そうするべきだね」という心構えが出来るのでいいなぁと思った次第です。電動車椅子の方も複数見かけました。

劇場自体の小ぶりさも良かったです。東京で言うと池袋の東京芸術劇場くらいのサイズ感でしょうか。Mozart!やRudolfなどBDで見た大演目がここでやってたのかと思うと感覚が狂うレベルの大きさ。でもこのサイズでペイ出来て興行が成り立っているんですよね。文化の違いというのがこういう形で出ているとは思わずこれはカルチャーショックでした。
だって最悪最後列でもシアターオーブのS席最後列より近いんじゃないかな…。
私は帝国劇場の巨大なレミゼを愛していますが、ちょっと認識が改まった次第です。

ただロビーはものすごく狭いんですけどね。その分外の空間が使われていてそれも良かったです。帰りはバスが数台来ていたので送迎みたいな文化もあるのですかね。気になりました。


新しい経験に胸を熱くして、ホテルに帰って空港で買ったサラダをやっと食べて凄まじい初日を終えました。

*1:取り調べしてて今思うと気付いてたら通れる雰囲気じゃなかった。

*2:自戒です

2023年ウィーン&ブダペストの旅。2.ウィーン観光

今回は到着から初日の観光のお話です。
ここから本格的に写真多めになります。

 

夕刻、ホテル着。

空港からバスに乗りウィーン西駅Westbahnhof到着。雨で冷えこむ。
たしか12℃とかだったんじゃないかな。ウィーン滞在中はウルトラライトダウンに大変お世話になりました。綿ストールもあってよかった。

雨のウィーンの街

石畳にスーツケースはキツいとは聞いていたけど路面電車のレールの方が脅威でした。
少々道に迷いつつ完全にGoogleMap頼みでホテル着。
笑えるくらいライムント劇場そば。私がそうしてくれと言ったんだけど。

ところで受付では住所を書いて「Saitamaって何?」と聞かれたけど行政区って国によってPrefectureが通じないみたいでどうすりゃいいんでしょうね。
疲れ果てたのでお風呂入って持ってきた石鹸で軽く洗い物して、買ったサラダも結局食べず9時前に就寝。(飛行機でお腹いっぱいで…)
バスルームは床が暖房になっていてなんでも乾いてこれが大変助かりました。ヨーロッパっぽい設備でバスルーム自体がかっこよかった。

バスタブとトイレ
バスルーム可動鏡


2日目、ウィーン観光の日。

いっぱい寝たので体調も良く、階段ですれ違ったおばあさんにMorgen!と言われてMorgen(小声)と返していい感じに朝食を済ませてウィーン市内観光に出発。
予定としては
ホーフブルク宮殿見学→郵便貯金局の前まで行く→リンク一周路面電車に乗る→時間があればシェーンブルンに行ってもいい
くらいの感じであまりちゃんと決めてません。19:30からRebecca観劇のため間に合うように帰り身だしなみを整えることができればよし。

Ⅰ ホーフブルク王宮 Hofburg

ウィーン西駅Westbahnhofから出てU3線に乗って数駅、のところを初手でU6に乗り間違え戻って乗り直し(鉄道の48hパスはこういう時のための安心と実感)、新王宮は飛ばすつもりがGoogleMapに雑に入力したばかりに新王宮側のVolkstheater駅で降りてしまい新王宮前に出てオイゲン公像にご挨拶し、門を突っ切ればよかったのにぐるっと一周してやっと到着したホーフブルク王宮です。
予習が足りてない。おかげでVolkstheater前のマリア・テレジア像にも会えたので悪くはないのですが。

ホーフブルク

向かいに建つロースハウスも一応見る予定建築の一つでした。「装飾が当たり前の時代にぺろっと全部剥ぎ取って建てて物議を呼んだ」ということは知っててもこんな王宮の真向かいだとは思わないじゃん…やはり建築は土地と一体ですね。

ロースハウス

Ⅱ シシィ博物館 Sisimuseum〜皇帝の居室 Kaiserappartements

土地に来て初めてわかる、というのは王宮内のシシィ博物館でも感じました。
緑豊かな土地で育ってこの石造りの街で、しかも閉じ込められるように生活するのはかなりキツいものがある…広場だけでもそういう印象です。

シシィ博物館ですが、音声ガイド(日本語対応)がかなりしっかりしていてものすごくいい展示でした。暗殺されブダペストから追悼のイベントが広まり1960年代に映画の影響でアイコニックな存在になったところから実際の人間としてのエリザベート像を追っていく、という流れで悲劇のヒロイン過ぎず利己的過ぎず、バランスの取れたものになっていて良かったです。(ミュージカルエリザベートも元々はその60年代の印象へのカウンターだったのでは?と思ったり。見てみないとわかりませんね)
展示物はドレスはほとんどレプリカでもやはり圧巻…。当時の生活用品なども存分に楽しめました。

シシィ博物館の後に続いて皇帝の居室へ。ここも日本語ガイドがそのまま続きます。
改めて解説されると皇帝フランツ=ヨーゼフも十分面白い人ですよね。
母親が父を無能と見切り18歳で即位させられ、そもそも勤勉で軍隊生活が肌に合っていて君主より公務員向きだったとはオーストリア史の本で読んでいましたが、外交で上手く行かないこと続きながらも諸民族平等の理想を貫き68年在位し支持を得たわけで。シシィと違って皇室向きの人物だったとしても、そういう個人的な資質でやる仕事なのか、という視点で描いた作品があっても良さそうだなーと考えながら、執務室のかのシシィのでっかい肖像画が目の前に配置された机を見ていました。
シシィの部屋には推しのハイネさんの写真がたくさん貼ってあったのが笑いどころなんだけど、いやーでも自分の若い頃の姿をでっかく飾り続けてる夫、あまり嬉しくないな…。
ここはおみやげを買って終わりにしました。(銀器コレクション見逃した!)

シシィ博物館の出口

Ⅲ 街歩き〜郵便貯金局 Österreichische Postsparkasse

王宮を出たらお昼近く、観光客も増えて街の様子もわかってきました。
ほぼ京都だ。
ものすごい量の観光客が右往左往しているしGoogleMapの確認もしてるし私もその一部だと思ったらリラックスして歩けるもんですね。大きい寺院に入ると「スリ注意」の看板が出ててなるほど。リンク内はそんなに大きくなくて目当ての郵便貯金局 Österreichische Postsparkasse までそんな距離でもないみたいなので歩いて行くことにしました。

街中にライド施設があって街中にライドがあってもいいんだ!っていうアメイジングでした。流石に一人は憚られたので今度は人と行きたい。
そして歩いてたらあったから入ってみたシュテファン大聖堂。ゴシック様式のゴテゴテさが石造りの街にニュッと現れるのが迫力あっていいですね。中に入るとちょうど正午のミサが始まって良かったです。当初ここさえスルーするつもりでした。予習が足りない。

そこからうろうろと歩いて10分程度かな。郵便貯金局到着です。

建築の勉強をちょっとだけした時に「いつか絶対行く!」と思った場所でして、今は美術学校かなにかになってるみたいなんですよね。写真で見た美しいホールはカフェになってるとか。で、この日は土曜日でお休みでした。わかっててもとりあえず表だけ…ということで辿り着いたのがこの写真。なんですが…
なんか見てたら回転ドアから人が…出てくる…?
えー休館ではない
入れるのかな…もういいか…行くか…?

ウィーン郵便貯金局

入れました。10年前のコンデジでも綺麗に写る、教会建築の様式を新素材で作ったこの明るいホール…綺麗だ…。
ただこれは廊下の窓に張り付いて撮影出来ただけなのでやっぱり歩いてみたかったですね。*1

マクドナルド、リンク一周失敗

この後は予定がふわふわしていたので予習したウィーン・リングトラムVienna Ring Tramに乗りたいな、ととりあえず移動。
乗り場のあるシュヴェーデンプラッツSchwedenplatzに行くのにも逆方向に乗ること1回。文字がちゃんと認識できてないと人間はこんなに間違えるんですね。学びでした。

乗る前にトイレに行きたいのでマックに入り食事。英語でまともに食事を頼んだのがここが初めてだし物乞いの方が現れてポケットにあった小銭渡したり有料トイレ初体験したり(先に入ったら払った額のバウチャーがお店で使える仕組みだったよ)、色々考えるきっかけになりました。
さて、トラムの乗り場所を探すものの…見当たらず…。

シュヴェーデンプラッツ駅周辺

GoogleMapを頑張って見直すと「臨時休業」と。やはり必要なのは最新情報ですね。

ウィーン観光は1日しかないため全体を知るに丁度いいかと思ったので残念でした。わりと無念が多いので次にくるモチベーションにして、GoogleMapに感謝しつつ次のルートをざっくり再考。中心地に戻りつつ歩くかたちで、モーツァルトの最新施設→ローナッハ劇場の前→アウグスティーナ礼拝堂→モーツァルト像の公園に決定。

モーツァルト神話 Mythos Mozart

シュヴェーデンプラッツからU1線でシュテファンプラッツに戻り最初に着いたのはこちら。モーツァルトの音楽を知り体験できる

モーツァルトはそんなに関連書籍読んだりまでしてないのですが最新のアトラクションということで行ってみました。
チケットを買って時間指定グループの入場になったら(説明がいまいちわかってなくて売店にいたら声かけられてしまった…)カウンターで骨伝導イヤホンを貸してもらい出発。全自動の音声解説を聞きながら映像と音楽を一室ごとに自由に歩いて楽しむスタイルの展示といったところ。
一八世紀のウィーンの喧騒を再現したアニメーションがとても良くて楽しかったです。鳩に襲われたり。
ただ入場料が高いは高いのと終盤が微妙になって行くのでオススメかどうか…個人的にシシィ博物館の音声ガイドバーがイヤホンで全自動になるのかと関心してました。今回は英語音声でしたが、チケット購入時にどこから来たか聞かれたので人数が多ければ他言語対応もいずれあるといいですね。

一応撮影可能だったみたいです。ミュージアムショップを楽しんで出ました。

Mythos Mozart

Ⅵ 街歩き〜ブルクガルテンBurggarten

ここからはGoogleMapで作ったルートで街歩き。

ローナッハ劇場

ノートルダムの鐘上演中のローナッハ劇場。ここもいずれ来ることがあれば…。

アウグスティーナ礼拝堂
カジノ街

アウグスティーナ礼拝堂Katholische Kirche St. Augustinと移動中に見たカジノ街。
エリザベートの婚礼の場所ですね。礼拝堂は多分ちゃんと調べれば入れたのかと思うんですが全然わからないので塔の写真だけ。もしかして外のドアから入れたのかな…。
アウグスティーナ通りは本当に賑わっていて日本人観光客もちらほら。デザインのいいおみやげやさんで親戚のキッズへおみやげのステッカーを買いました。*2

そこから歩いてすぐ裏のブルクガルテンBurggartenへ。

有名な像ばっかりですね。ばしゃばしゃ撮っておひらき。
17時をまわりiPhoneの充電も限界だったのでマリア・テレジア像を撮ってフォルクスシアターFolkstheater駅からホテルまで帰りました。

ママだよ〜。

(次はRebecca観劇です)

*1:廊下にいる間入ってくるスタッフには特に何も言われませんでした。

*2:翌日の駅に期待してたらギャルシシィの絵柄のグッズ買い逃した…。

2023年ウィーン&ブダペストの旅。1 決意と出発

2023年4月の半ば、憧れの海外一人観劇旅行に行ってきたのでその記録を残します。

海外経験が友達と行った2泊の台湾旅行のみ&英会話の実戦経験なし&コロナ禍終結とは言えない時期という状況に、3年前ハンガリーに行く予定が流れた+いろいろを天秤にかけて決断までだいぶまごまごしましたが、結果的に行って良かった旅でした。
自分の記録なので細かめに書きますが、観劇については個別記事にしておきます。

では…

(この記事ではとりあえず到着までの記録なので現地の話だけ読む方は次の記事に飛んでください)

 

決断「””今””、行かなきゃじゃん?」

2023年2月の終わり。悩んでいました。
4月のミュージカル「ラ・マンチャの男」が見たい…。
それも神奈川での東宝版松本白鴎のラスト公演ではなく憧れのブダペストオペレッタ劇場であるオリジナル演出公演。ユーロミュージカルファンの間で今もカルトな人気を誇っている(と思う)ロミオ&ジュリエットRómeó ès Júliaを制作した劇場、その時大公役だった推しNèmeth Attilaが主演の日がある…。*1

そしてドイツのシュトゥットガルトでは日本ではこの先再演があるのかはっきりしないダンスオブヴァンパイアが公演中、しかも4月からはドイツ語圏の推しの一人Mathias Edenbornの伯爵役カムバックがある…。*2

いくら待っても日本には来そうにない両者をまとめて見る機会、検討してもいいのでは…?と思うももう公演まで2カ月を切った頃。散々悩み倒して会うオタク会うオタク相談しては退路を断ちつつ決意を固めたのが3月の1週目。旅行会社に…相談だ!

………

2社ほどに相談の結果、Googleマップでは飛行機で2時間程度に見えたシュトゥットガルトブダペスト間の都合がつかず、かつシュトゥットガルトは観光のアテも難しいことからウィーン~ブダペストの旅に決定しました。*3
ウィーンではシェーンブルン宮殿ElisabethコンサートWOWOW放送の記憶も新しいMark Seibert出演の、こちらも日本再演未定作品Rebeccaがあるのでちょうどいいということで。

後から思うと旅行慣れしていない人間は観光地に行く方が絶対楽なのでこの旅程で正解だったと思います。Mathiasにはまたの機会に会いに行くぞ…という目的も残せました。

 

出発「こわい……………………」

1カ月の準備期間で観劇と2都市間移動の鉄道チケットを自力手配し、ひたすら着るものを整えて出発の日が来ました。成田出発は平日の夜。日中は働き定時上がり後電車で成田直行。この時の心境、めっっっっっっちゃ怖い。
後々考えると生理前のメンタル不安定な時期なのが主な原因だったんですが、空港内のお店も到着した19時半にはほぼ開いてないし軽食を買うにも残り少ない売店は混んでるしもう夜なのも嫌だし日本語の通じない空気が増していくし一人国際線に怯えきったまま搭乗しました。今思うとちょっと、いやかなりおかしかった。レートよりも日本語が通じるうちにと両替も先に済ませて無事に荷物検査もパスしたんだから問題ないんですけどね。

そんな感じで乗り込みドーハでの乗換までの12時間のフライトです。聞いてた以上に寒くて眠れないけど、ご飯はやたら出るし日本語対応のCAさんは近くにいるのが判るしここまではまだチュートリアル…という気分で過ごせました。緊張しすぎだ。噂の機内映画にリトルショップ・オブ・ホラーズがあるも初見映画を公共の場で見るのも怖い気がして断念。珍しい機会だったんだけど。

無事12時間を終えカタールはドーハ着。予習した巨大熊を記念撮影し4時間待機。ここで携帯電話のSIMを抜き忘れうっかり接続し国内キャリアの自動ローミングを起動させてしまうミスをしたり、あんまり早く搭乗口をうろうろしてたら「アンタどこ行くの?乗口は?」と英語で聞かれてしまう。まぁ英語で対応出来たということで経験値ゲットと思ってました。まだチュートリアル気分です。

ウィーン到着と英語コンプレックス

普通に乗換えられウィーンへ。トマトジュースを頼むも聞き取ってもらえず「リンゴ…」のつぶやきとともにアップルジュースを頂く程度のハプニングで(日本線に乗るCAさんの気遣いだったのか…)到着。

荷物受取したところで隣に座っていた女の子を見かけたのでなんの会話もなかったけど手を振ってみたら話しかけてくれまして、どこから来たかは上手く聞き取れなかったけど(ごめんね~)「ウィーンから列車でザンジバルに勉強に行く」とのこと。Studyがうまく聞き取れずにいたら「英語あんまり出来ないのね」って笑ってくれて、多分この辺でできる限り英語で話す度胸がついてきてだいぶ旅も楽しいな~と思えてきました。
ただ一緒にバス乗り場の場所をInfoで聞いてからお別れするときにSee youって言ってしまったので更に噴き出してましたね。
See youは流石に難しいな。うん。ザンジバルでがんばってね。*4

ウィーン国際空港

バス乗り場はわかったしチケットも買えたものの、空港のスーパーで量り売りのサラダの買い方がわからず(容器を選ぶGroßとKleinのボタンの意味がわからないだけで…)計1時間ロス。初日はホテル着いたらゆっくり過ごすつもりだったのでいいんですけどね。さてバスに乗って空港脱出。

次の記事に続きます。

ウィーン版ノートルダムの鐘看板広告

ローナッハ劇場で上演中のノートルダムの鐘広告。
隣にレベッカもあったけど撮り逃しました…。

*1:だいぶニッチな話をしています

*2:まぁまぁニッチな話をしています

*3:1社目でそう決めて2社目にそのまま相談したので2社目なら問題なかった可能性はあります。またはそこだけ自力で航空券取るなりすればよかったか。

*4:5/8追記 ウィーンからザンジバルへ列車は流石に聞き間違いだと思う。諸島だよ。

「ジェーン・エア」強く赦しを授けられ、最後に勝つのは…

東京芸術劇場 3月24日 13:00 演出:ジョン・ケアード)

久々の芳雄さんです。別に熱烈なファンではないです。
ただミュージカル俳優を追って地上波放送など見ると触れる機会が多くなるのでやはり思い入れもできる方です。それだけの力量もある方ですし。
で、基本的に芳雄さんの演目はチケット難と考えてるので一回だけになります。昨年ガイズアンドドールズでもそうだったのですが、結構気合い入れて“古典”(これはあらゆる方向からの意味)を頑張ってやっている方なあまり「何度も見て考えたい」という演目にはならない気がするんですよね(別に考えてもいいんですが)。私一人にしても大劇場の大衆演目を見るということに対して色んな考えがある昨今なので良い悪いでは言えないんですが、ちょっともったいない気もします。(すごくファンだったらストプレに行くのかもしれないけど)

 

さてジェーンエア。THE 古典ロマンスでしたね!
レミゼからミュージカルを見始めたときこういう作品がたくさんあるのだと思い込んでた気持ちを思い出します。なんか猛スピードでハッピーエンドまで持ち込んだ気もするけど、古典文学は長いからね。
で、古典なんだからそうなんだけど、嵐の中の声が比喩に思えなくて案外近所だったのね?と思いかけました。いいえ遠い旅路なんですが。ロチェスターさんとの出会いが完全におもしれー男/女なのに、ジェーンがポジティブなものとして受け取り歌い出すのが印象的です。何はなくとも前向きな気持ちになる出会い。まぁその時えらいかっこいい落馬シーンだったので驚きました。なかなか舞台上で「馬」を成立させるの大変じゃないですか。馬でしたね。

ヘレン・バーンズとの出会いに重きを置いたシスターフッドで始まり舞台上の「まなざし」が巡り巡ってヘレンの存在を感じるのが良くて、その辺はなかなか涙腺に来ます。人生の孤独極まった時に柔和な萌音ちゃんが「許すのが正義」と教えを授けて去ったら従うしかないじゃない…(しかし子役が似合いすぎてたし素朴に岡山弁で話してた気さえする萌音ちゃんでした)
このシスターフッドで包み込んでおけばロチェスターさんとのおもしれー出会いがジェーンの自立を際立たせるのが気が利いてる脚本で良かったです。最終的に持参金が全てを解決するのはもっと説明がいるのかな、とも思いますが(19世紀の結婚は身分より持参金、コゼットもなんとかした持参金)。

「RENT」決まり手、No day but today固め。

(シアタークリエ 3月16日 18:30 演出:マイケル・グライフ 日本版リステージ:アンディ・セニョールJr.)

 

初めて見た2016年来日公演以来の生RENTでした。
いやぁいいですね。今更内容を書くものでもないですが、NetflixでTick,tick…Boom!が公開されてから久々に見た本編だったので、近年古びた表現になっていた部分も素直に入って来た気がします。あれを見てしまうとベニーが笑えないんですよね。ベニーはHIV陽性でも何でもないけどしかし。

 

さてその初回が国際フォーラムホールCだったのでクリエのセットの印象はちっさ!だったのは仕方ない。その分バンドがかなり飛ばしていて気持ちいしそれに応えるようなキャスト陣の熱唱。佐竹莉奈モーリーンと高城奈月ジョアンのTake me or leave meはこれまで見た女性デュエットのパワーを全部更新して行くレベルで気持ち良かったし。また百名さんのエンジェルのダンスが冴えて生き生きと彼女を表すほどに喪失が深まるのも印象的でした。

ただ初めて見た頃から年を取ると見えて来るものも違ってきて、ここまであの若さの不安も感じるものかと驚いてます。主にモーリーンとロジャー。売れないかもしれないな…ってイディナ・メンゼルには思わないですよね。あのジョナサン・ラーソンの青春を再現し地球上に確かにあったあの頃を語り続けるためにキャストを更新する上でこういう一面もいずれ見えたに違いない、というのも面白い公演でした。

 

それにしても2023年に聞く「生活保護を受けている異性装の吸血鬼が最近ハマってるボーリング」(だったっけ)の思慮の無さが凄いのでマーク・コーエンは2010年代になって現れた「シェアハウス ウイズ ヴァンパイア」に嫉妬を燃やしててほしいです。その頃どんな人間になってても。

 

太平洋序曲追記のこと

前回記事はこちら

「太平洋序曲」よどみなくよどみの中へ - Hunnigan, Sloane and Minchin

 

これを書いてから2回追加を見た上で補足。

(ツイートのまとめになります)

 

日本語歌詞を音のシンプルさで突き詰めてくと

おそらくEテレミニマリズムに向かうと「わたしは真吾」を見て以降考えていることだけど、ソンドハイムの日本語化で既になってるとは思わなかった。こういった音と歌詞のシンプルな美しさに見合う演出の作品はそうそう見ることが無くそれだけでももの凄い価値を感じる公演でした。
あの円形のスクリーンが本当に出色の出来で、俳句合戦をして歩く中、陽が落ち暗くなった林の道に現れる提灯行列、永遠に忘れたくないですね。

狂言回しを考え直してみたけど、

「美術品コレクター」として存在する以上あのビジュアル“古典美の世界”を取り仕切る者としてはその中で起こる歴史上の醜い事象はその美的価値の前で“無い方が都合のよい物”なのでは。だから最後は権威を語り序曲のその後本筋を握り潰し未来は空虚な明るさに語る…。と、極端に意地の悪い見方で書いたけどそこまで言わずとも「この事実はあなた方にとってどういう価値を持ちますか」という提示をする存在として「美術コレクター」なのかなと思います。

NEXTについて。

前半「アメリカと同じように台湾韓国満州そして中国も開こうではないか」という宣言が高らか過ぎて本当に気分悪くなるし踊る2023年の服を着た人々そして境界を失った我らは愚かな末裔…と初回はスクリーンが見えておらずその印象で止まっていたのですが、後半ギャラリーの男が降りてきて語る「かつて、外国を拒否する国があった」からの一連は確かにポジティブに見せ過ぎてる感がありなるほど険しいな…と思ったのは確かです。ただ、一度ここまでの延々続くマチズモの共鳴を味わった気分がぶり返すと入管や技能実習生がよぎって日本◯ね〜!!!と感じたのも確か。

それから狂言回しの最終形態「我こそは◯◯◯◯」って、つまり「こんにちは◯◯ラーです」くらいの聞こえ方しないといけないんだよね…その後の台詞で何が言いたいか察するだけでは済まないほどに受け取りにおそらく本国と差がある(というか同じ回見た後面談で理解した)では流石に難しい…。

実力者がしっかり映える作品になったこともあり、大変意義のある公演になって良かったなと思いつつ、日本上演だからこその難しさが最終的に出てしまったようで惜しいところです。

 

演出家のこちらのインタビューは東京公演を踏まえての内容で大変面白かったです。ジョン万次郎のあり得ない改変についても一言あるので是非どうぞ。

www.musicaltheaterjapan.com

 

 

「太平洋序曲」よどみなくよどみの中へ

日生劇場 3月11日 13:00 演出:マシュー・ホワイト

発表から楽しみにしていた初めてのソンドハイム作品。
まもなく初日というところで以前の日本上演とは違う1幕バージョンとの知らせが入り(だいぶ炎上して)3時間の大作を見る気分をなんとか切り替えての観劇になりました。
予習で音源を聞く段階で明らかに日本の話をしてるのに英語で居心地悪い…と理不尽な気分でいたので日本語訳詞で聞けるということだけでわりとわくわくしてきたんですけどね。

いざ…どうだったかというと、梅芸の海外演出作品の良さが爆発してました。
第一報からこういうものを楽しみにしてたんだなと心から思える、抑え目でいて想像力を試しゆさぶられる演出。全方向へ皮肉の強い脚本と語り尽くす音楽。日生劇場ではちょっと大きく感じるところもあれど大作のスケール感である必要もあるのでは…と思います。
以下、ネタバレありで行きます。

 

まず美しすぎる

開始直後から目を引くのは美術ですね。
美しすぎる。
担当がここに桂離宮を作ると決意したんだろうか。
上手奥の円形スクリーンも手前の枯山水が如き台も床から伸び大きな半円を描く板も、この舞台のイマジネーションに向き合わねばという気にさせられます。

…が、その中で描かれるものの多くはあまりにも無様な権力の右往左往とおぞましい暴力です。香山と妻たまての別れ惜しむ姿や香山と万次郎の俳句のやりとりなど個人の心が交わされるわずかなシーンを除いて、嘘やごまかし、脅しばかりが繰り広げられる。

思えば始まりは美術品を並べたギャラリーの場面でした。並べられ来客からしげしげ眺められる時代を越えてただ美しいもの。「美しい、という価値はどんなおぞましい来歴があろうと構わない。むしろ残っていない方が都合がよい」セットが冴え冴えと愚かさを描く舞台を活かすたびにそう皮肉を向けられているような気分になりました。

外からくるもの/内にあったもの

その美しい世界で核とも言える印象を感じたのが”暴力”でした。統制のために国を閉ざすことから始まり(「完全な平和」とはディストピアの物言いですよね)現れるアメリカの要求、とんちをきかせてまで取り合わない排他的意識、次々に現れる国々による蹂躙そして…。
この暴力の繰り返しの脇道となった存在も忘れてはいけません。ミュージカルに頻出する”娼婦の群舞シーン”のウェルカムトゥカナガワの娘たち、終盤ソンドハイムのたくみな音楽でしんどいシーンになっていたプリティレイディの少女には父の愛情のようでまた家父長制の強さも感じました。女性が何かを動かすことのない物語であることを自覚しながら国の内側にこそあった暴力を描き出して、無神経という気分にはなりませんでした。
「死んだ」という事実のみで出番を終える香山の”冷蔵庫の妻”たまてもいますね。あれが自殺なのか他殺なのか、なにか理由が読み取れるのかあすこはまったくわからなかったのですが、あれこそ壮絶に美しく飾り立てられて、この舞台における「女」の立ち位置の予言(と言っていいのか先に描かれる総括というか表現がない…)のようなイメージかなと思いました。これについては色々聞いてみたい。

逃げ場のない世界の

さて、この暴力の雪だるまの転がり果てて行く様、時流の読める(上様と同じ顔の)女将は娘を売り、読めない上様は選択を間違え続ける。にこやかに大砲を構える欧米列強が小さな上様(かわいいんだけどかわいいと感じることに暴力性が宿りさえする)に言い寄り奪い取って行く様がプリティレイディのシーンに重ね合わされ、流されていく香山はすんなりと洋装を纏い、万次郎は刀を選ぶ。おそらく元々の脚本の力と音楽が強いのでしょうが、もうこのあたりの流れが上手すぎて単純な見応えが凄かったです。(ただちょっと香山と万次郎のラストシーンは突然湿っぽくなりすぎてて止まってしまった感はあり)

そして最後に華々しいドラムの音と共にやってくる。権威は失墜し、内から外から数々の暴力が島国を席巻し、新しい世界を作るその時生まれる植民地主義の成した子供の姿。その口から出るおぞましい未来の予告。

 

恐ろしかったです。山本耕史さんの狂言回しの淀みない口ぶりの見事なこと。泣いてしまった。その不穏な演説を聞くのは2023年の服を着たギャラリーに集う人々ですが、あまり多様性のある集まりでもなくある種“強さ”のある人々のようだし、彼らが現れた冒頭を思い返すとその一員として客席は巻き込まれる感じがありました。(と言いつつここで演者を見すぎてスクリーン見れてなかったので大いに印象がズレてるところが多分あります。もう一回見たら追記するかも)

 

おわり

さて、幕末の描写に関しては「万次郎のことよく知らんけどこんな派手な人生だったらもっと有名になってるだろう」とか「徳川って言葉も出ないのにいきなり尊皇攘夷明治天皇とは」とか極度に解像度を落としている分終盤のしわ寄せが多少ありますね。それでも日本で、トンチキとバカ殿の狭間をギリギリ縫う世界を日本語で見られることに凄まじい満足がありました。またアメリカで生まれたこの演目自体を、2023年現在植民地主義の禍根についてを語られることの多いイギリスからもたらされた意味も考えていたいところです。