Hunnigan, Sloane and Minchin

グランドミュージカルとか映画とか

2023年ウィーン&ブダペストの旅。3 「Rebecca」観劇

昼の観光から帰っていよいよ初めての海外観劇となりました。
着席までのあれこれ(ちょっとやらかし)と舞台の感想です。

いざライムント劇場Raimund theater

昼の観光を終えてウィーン西駅Westbahnhofのモールをちょっと覗き、裏通り側の出口に警察が来てるのとかを横目に見ながら*1ホテルに帰着。

案外時間が無くなったけど、一応劇場行くのにちょっと気を遣いたいなと荷物に入れていたワンピースに着替え、寒いので一応昼も来ていたダウンを装備し出発。即到着。

開場前の広場にテントが出て既にお飲み物を楽しまれてました。やっぱりお楽しみは外なんだ〜っていうのと思った以上に社交の場感がすごい…。(もしかしたらこの週はイースター期間にJCSで中断されていたRebeccaのカムバック2日目の公演だったからかもしれません。こればっかりはそうでないの日に行かないとわからない…)

開演前のライムント劇場外観

上着と…お荷物は…?

ここからちょっとしたやらかしの話です。
ウィーン観劇経験のある方なら勝手知ったるお話かと思います。

建物に入るとスタッフさんが英語で「正面がエントラス、下がクロークです」との案内がありました。ちょっと混乱したのでエントランスを再確認し、クローク…?と気にかかりつつとりあえず売店も下階に降りパンフレットとCDを先に購入。ものすごい混雑のクロークを横目にチケットを見せてエントランスを抜けようとすると、
「私共のポリシーですので、上着とバッグはクロークへお預け下さい」と一言頂く。
そっかポリシーかぁ。
なら仕方ない、とクロークに行くも上着を小脇に抱えてる人も歩いてるしバッグにダウン入るしなぁ…と悩み倒して一応聞いてみる。
私「バッグは預ける必要がありますか?」
スタッフさん「お客様のバッグは大きすぎるため客席へは入れません」(ざっくり)
…ああ!!
実はこの時私が持っていたのは昼も観光に使ったバックパック。荷造りの際荷物にハンドバッグを入るか迷って忘れてきた次第。そこまでビッグサイズでは無いけどハンドバッグよりはずっとでかい…あと重い。そういうこと!
帰国して知りましたがこの規定はウィーンでは劇場法で決まっている消防対策なのだそうです。それは厳しくなる…。

日本の劇場でクロークに行くことがまずないので正直面倒くさくて…。(すいません)
それにバックパックを手放したら手ぶらになってしまうのが気がかりでしたが、ポーチ状のオペラグラスと長いベルトがついた旅行用財布を肩にかけてそれらしく済ませました。これが本日の精一杯。

そもそも折角服装を良くしてもバッグがこれでは台無し…というのを学んだ気がします。周りを見渡せばドレスコードは厳密になくてもドレスやスーツじゃなくても、襟付きシャツやきれいなパンツなどでコーディネートを「出来るだけ整える」ところとか勉強になりました。
帰っても着飾ったのに小さいバッグのサブに雑なトートバッグとかやめよ…。

 

Rebecca開演

鑑賞そのもの違い

客席に入ると劇場全体の小ささに驚き、着席して奮発した席の見やすさに安心してしばし待ったところで開演。
正直いつものような感想は書けないです。Rebecca自体はNetflix版で予習はしてきたので言語はそこまで問題なかったのですが、ここで受け取ったのは物語以上に劇場の熱気。パフォーマンスがその次といった感覚でした。

Rebecca開演前

幕が開いて歓声。主人公”私”Ich"が歌い終えたところでものすごい歓声。
お芝居になると声は無いけどぐっと集中してる感覚が劇場全体から伝わる。
ビッグナンバーには惜しみない歓声にショーストップ。笑えるやりとりではハッハッハッハッと声を出して楽しむ。

日本の劇場での各々が集中しきり、自分の内側で咀嚼しつつ他の人と笑いのタイミングの解釈違いさえ気になるようなせせこましさが全然無い。*2自分も気持ちが開放される感覚さえあるんですね。

私は日本で観劇中のおしゃべりが苦手ゆえ「海外の劇場はうるさいよ」と聞くしどんなもんか覚悟してやる…!ってくらいの気持ちだったんですが、ちょっとそういうのとは違う。ちらほら同行者に話しかける声も聞こえますが、全然ストレスにならないんですよ。舞台を全力で楽しんでる、という反応の一つに聞こえるから。(※言葉が分からないのが理由の可能性もありますが)
この熱気に押されての3時間、完全に新しい体験でした。

上手からスター下手からスター

当日のキャストはこちら。

Rebeccaキャスト表

これを事前に見るのを忘れて、もしマキシムがMark Seibertじゃなくて驚かないぞ!という気持ちで挑みましたが無事にマークのマキシムが拝見できました。
でっっか。
体も存在感も歌声も全部でっっっっっか。
そう、私はこれを見に来たんだ…この”巨大で尊大”なタイプの俳優を。そして散々音源で聞いた華やかな歌声。影がある男にしてはちょっと”陽”の気が強くてICHを怒鳴りつけるところで急に元気になっちゃっててそういえばMozart!の猊下だった男でした。序盤でなんか客席いじり的なアドリブかまして変な流れになったっぽくておかしな空気になってたのも、言葉は分からないながら楽しかったです。

ダンヴァース夫人のWillemijn Verkaikさんは昨年来日していましたね。オーブコン行った方の感想を聞いて楽しみにしてたけどほんと…すごい…。圧倒的な声で4回歌われる表題曲Rebeccaの威力が高すぎて何回ショーストップしたっけ??(2幕冒頭でバルコニーに逃げるICHを追いかけて二人で外を見たまま拍手を受け続けてちょっと変な感じになってた) Rebecca後も追いたい方になりました。

そして驚いたのがベアトリス役のAnnemieke van Damとジャック・ファヴェル役のBoris Pfeifer。すみません、出演されてるって知らなかったんです…!
アンネミーケはドイツ版エリザベートを散々聞いていて最近もウィーン版メリー・ポピンズのCDを買ったばかり。(ダンヴァースのAlternateとは聞いてました) ボリスさんは私のドイツ語圏が気になるきっかけになったロミオ&ジュリエットRomeo und Juliaの大公としてオープニングのアホほど聞いてるVeronaを歌っていた方。見た目でアレ?と思ったところで二人とも声でわかる…!

私はウィーンミュージカルはつい4年前に知ったばかりで(色々来日していた時代の人間ではないんです)、パンデミック中ずっと調べて聞いていた方が勢揃いしている公演だってことを知らなくて本当に申し訳ない…次々に現れるので興奮しきりでした。
(映像化、音源化キャストがそれだけ揃ってるってことなんですけどね)

さて存じ上げなかったキャストでもフランク役のJames Parkさんが誠実で屋敷の中で唯一頼れる存在として印象的でした。ほんとに誰も信じられないからね…。

レベッカとして

そんなこんなで存分に楽しみましたが、演出としては思ったより普通…かなとも思いました。お屋敷の具体的なセットが出てきて、予習した映画と同じ流れで見られるので安心感はあるのですが。ICHとマキシムの変化とかダンヴァースのレベッカへの強い思い入れとか、やはり日本版見てから挑んだらもうちょっと取りこぼしなく楽しめたかな、と惜しい気持ち。
ただやはりラスト、高い天井を利用した屋敷(主に階段)が燃えていくのはここで楽しむもの!という感じで迫力があっていいですね。歌声と炎と客席の興奮で熱い観劇体験が出来ました。

劇場という場所について

観劇を終えカーテンコールはさっぱり一回。みんな即スタンディングオベーションし、さっぱり客出し演奏中にホールを後にしました。
というのも私の座った列に歩行補助のいるお客様がいて、スタッフさんがカテコ中に待機していたから。このお客様は開演前直前、大体みんな着席した後にスタッフのアテンドで入って来られて同列のみんな列を一度出ました。このスタッフさんが必要をみんなに認識させることによって、「そうするべきだね」という心構えが出来るのでいいなぁと思った次第です。電動車椅子の方も複数見かけました。

劇場自体の小ぶりさも良かったです。東京で言うと池袋の東京芸術劇場くらいのサイズ感でしょうか。Mozart!やRudolfなどBDで見た大演目がここでやってたのかと思うと感覚が狂うレベルの大きさ。でもこのサイズでペイ出来て興行が成り立っているんですよね。文化の違いというのがこういう形で出ているとは思わずこれはカルチャーショックでした。
だって最悪最後列でもシアターオーブのS席最後列より近いんじゃないかな…。
私は帝国劇場の巨大なレミゼを愛していますが、ちょっと認識が改まった次第です。

ただロビーはものすごく狭いんですけどね。その分外の空間が使われていてそれも良かったです。帰りはバスが数台来ていたので送迎みたいな文化もあるのですかね。気になりました。


新しい経験に胸を熱くして、ホテルに帰って空港で買ったサラダをやっと食べて凄まじい初日を終えました。

*1:取り調べしてて今思うと気付いてたら通れる雰囲気じゃなかった。

*2:自戒です