「ヘアー(79年映画版)」
「Aquarius」「Let the sunshin in」などの名曲を持ちながら今日本でいまいち知名度のないミュージカルことヘアーの映画版がこのたび映画館でかかるということで行ってきました。
あらすじはここに。
「ヘアー」上映作品詳細 - 午前十時の映画祭12 デジタルで甦る永遠の名作
だいぶ変な作品だろうと覚悟していたのですが、冒頭の馬のダンス(まだCGなどない)に怯んだ後はミュージカル映画として想定されるくらいのぶっ飛び方で普通に見られました。
「ラ・マンチャの男」等と同様ミュージカル映画も下火になった頃のMGM制作のミュージカル映画です。馬や車など舞台では使いにくい要素をふんだんに使い明るい外ロケ映像で具体化していく豪華なノウハウが楽しめる作品になっており、NYの景色の中で歩く人物たちは後年の映画版RENTを思いだしたり。
おそらく舞台にはないであろう乗馬シーンから始まるのが個人的にアガります。あとゴッドファーザー1/5くらいのパーティシーンも。その乗馬によって一見真面目な主人公クロードの人物造形が始まってるのもまた良さがあって、割と序盤から掴まれてました。(おそらく南西部のショースタイルの乗馬ですよね。スタントがやりすぎた雰囲気があったけど)群舞のシーンはちょっと変なんだけどまぁ…遅れてきたヒッピー映画なので大目に見て下さい。
ミュージカルとしては音楽の強さもいいです。ソウル、ファンクを取り入れたパワーナンバーが次から次へと…。Black boy/White boyの辺りは歌詞を皮肉な裏切り方の演出で見せるところが最高なんだけどあれは舞台もああなのか気になるところ。
さて、物語はすごく正直な反戦物語。パーティに乗り込んだりふざけたい放題かと思ったバーガーがクロードに明日はないことを常に思っているところ、またヒッピーたちの無責任さにも目を向けている部分が印象に残ります。
しかし…あんまりじゃないですか…あのオチ…。
終わり方については舞台とは改変されてるということも聞いていたのですが、あんな描写だとはまさか思わず…。結局MGMはヒッピー嫌いだったんだろうか…いやそういう時代だろうけど…あらぬ方向から抉られて終わりました。
>>少しネタバレ
身代わりになることは知っていて、バーガーさんが他人のために髪を切るのが美談のようになったら最悪だなと途中から思って見ていたんですがまさか事故だったなんて…。
最後のLet the sunshin inを聞くのを楽しみにしてたんですけども釈然としない気持ちで始まり即落ち2コマの墓標シーンがあり…ワシントンの集会が映ったのがせめてもの救いですね…。
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ただ反戦ものとしては機能してないわけではなく…そこがなんとも言えない気持ちになります。2023年の今の気分にはすごく合っていたし。アジア人女性のアップで進むシーンが79年にほかの映画で見られただろうか、など考えてもしまいます。
最後に、日本で見ることができた舞台版ヘアーですがは60年代ベトナム戦争リアルタイムの初演、80年代のPARCO版、そして2013年の来日版が主なプロダクションのようですね。
何らかの形でまた見られるといいんですけどね…。「裸になる」という演出の制約がどれほどのものなのか次第な気がしますが…。
ミュージカルだけどニューシネマの趣もあるのでこのシリーズ思い出しました。
併せて見たい。