Hunnigan, Sloane and Minchin

グランドミュージカルとか映画とか

「NTL レオポルトシュタット」

2022年に日本版公演があったことでも話題になっていた作品の英国版の上映があったので見てきました。www.ntlive.jp

 

始まりは1899年ウィーン、まだ帝国の栄華の時代に生きるユダヤ人一族の過越しの祭りの日。そこから56年かけ描かれる成長する子供たちと年を取る大人たち、結婚、出産、不貞それに戦争。ツイッターでストーリーについてあまり語る人がいないのが不思議だったのですが、こういった家庭劇としてはありふれた姿をしている上で随伴する差別の描写こそ出色の作品だったので納得でした。
代替わりと時代の変遷の展開のさせ方としては朝ドラっぽさもありかなり好きです。

 

市民として職業を選び生きられた時代にあった頃でも社会に引かれていた薄い点線が段々と濃くなり実体を持ち壁になって追い詰められていくような差別の広がり。そもそもワルツを踊っていた時代にも蔓延っていた蔑視があり表明することすら憚らなくなり虐殺に向かう。すり減らされた一族と生き残った者の選択。全部がしんどくのしかかって、その先、今見ている自分たちを待つ時代について思わずにはいられない辛さがありました。

そんな中で一族が集まる雰囲気についてはポジティブにもネガティブにも見せない形を取っていてすごくバランスの冴えた印象もあります。お正月っぽいなという気持ちにもちょっとなったり。

 

たまたまWOWOW放送していたエリザベートの原語版がよかった余波でオーストリア史について一冊読んでいたので多民族国家の時代からWWⅡまで予習した通りで面白くあったのですが、それでも情報が頭に入りきらなかったり字幕を流してしまった箇所があるので全編しっかり堪能しきった気がしないのが勿体なく、せっかくなら日本語上演も見てみたいなと今更思うのでした。

(パンフで確認したらグレートルがユダヤ人でないこととヘルミーナがオットーと結婚したかどうかはわかってなかった)
再演よろしくお願いします…。