Hunnigan, Sloane and Minchin

グランドミュージカルとか映画とか

「生きる」命短し誰がだって?

「生きる」見てきました。

 考えたらこの規模のグランドミュージックを見るのが再開してから初めてでそのことに泣けてしまった。私はグランドミュージカルのグランドなところを愛しているので…散々迷ったけど見に行って正解でした。

 細部が見事で美術もステージングも楽しい!が一番大事にされてる感じ。特に女性が最初から生き生きと描かれていて気持ちよかった。というかウジウジカチコチしたぶつかりを避ける男達との対比として女性たちの政治活動ですからね。そうなるよね。
 2018年の作品でセックスワーカーの群舞があるのかーと思いつつそこもまぁ嫌味にならず80年代のヒット作のような“悲哀”をわざわざ持って来ずという点は可です。彼女らの雇用主と登場するシーンについては難しいとこではあるけど。とよだって描いてないだけで実際はもっと周りから言われてるわけでしょう。工場の前での本人の反応や息子の言葉にも現れてる。ただ舞台上で描かず留めてるこのバランスは良かった。

 

 ただ話の大枠が昭和男のファンタジーというのが多分にあって評価としては…めっちゃ悩むんですよ…。
 とよちゃんも小説家さんも妖精なんだよね…。言葉を尽くさずに理解してくれる、黙ってやった行いを自分の手柄だと称えてくれる…そして息子には父の存在を知らしめることができる。日本の男社会を成立させて抱え続けてるマスキュリニティの問題への切り込みはしないで済ませるんだなぁというのが素直な感想です。前半あれだけ生き生きした“女性たち”を描けたのに“1人の男だけ”の浪漫に収斂してってしまったのが残念でならない…。せめてエピローグにとよちゃんの回収だけでもしてくれたならまた違っただろうな…。

 

 それでも女性をあれだけ悪く描かないで生き生きさせるのに徹している作品はなかなか無いし楽しめたのでことさら批判する気持ちは私には無いです。私は女性描写が良ければ強く不快でもないんだなとわかってきた。
そして日本的な美意識を取り入れたこういう美術で、黒ずんだスーツの男たちの群舞があって、日本が舞台の時代物グランドミュージカル(ミソジニー抜き)が作れるのならこの先が楽しみな次第ですのでまたチャレンジしてほしいな。


 だって冒頭小説家のビジュアルだけで5億点つけたよ?!!!

 

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